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CSR報告書の読み方(3)~マテリアリティ~

今回は、CSR報告書をちょっと読み始めると出てくるキーワード「マテリアリティ」について取り上げてみたいと思います。日常生活ではまったく聞き慣れない言葉ですが、英語の「material」には「重要な、適切な」といった意味があり、CSRの世界では「重要課題」と和訳されることが多いように思います。

具体的に何を指しているのかというと「サステナビリティの観点から見て、その企業にとって重要な課題」、言い換えると「事業内容から鑑みて、社会に与える影響が大きい課題」ということを示しています。

例えば、製紙メーカーであれば森林資源の問題との関連が大きいですし、製薬メーカーであれば健康問題、保険会社であれば投資による社会への貢献などがそれにあたります。

このマテリアリティが、CSR報告書の重要なポイントとなります。幅広いCSR活動のなかで、企業は、自社が社会に対するインパクトの大きい課題にフォーカスして取り組むことが、最も効率よく社会へ貢献することができます。

それでは、マテリアリティはどのようにして決定されるのでしょうか。自社の都合の良いように決めることは望ましくありません。サステナビリティは社会との関わりから考えなければならないため、いろいろな立場のステークホルダーの声を集め、社会がその企業に対して何を期待しているのかをしっかりと聞き、それをもとに定めることが必要です。

報告書を読む時には、企業がどのようにして自社のマテリアリティを決定しているか、適切なマテリアリティが定められているか、またその課題についてどのように取り組んでいるかに注目してみてください。

233号(14年4月9日発行)

CSR報告書の読み方(2)~トップメッセージ~

CSR報告書の中で、とても重要なコンテンツがトップメッセージです。トップメッセージを読むことによって、その会社のトップが真剣にサステナビリティについて考えているかどうか、どのような方向に向かって進もうとしているのかを知ることができます。

トップメッセージは報告書の冒頭にあることが多いですので、報告書を開いたら、まずここを読んでみると良いでしょう。時に、当たり障りのない「ごあいさつ」的なメッセージも見られますが、これでは、真剣に取り組んでいないことを印象づけてしまいます。サステナビリティへの思いや取り組みを簡潔に、そして力強く伝えるメッセージが求められます。

読むときのポイントが3つあります。1つ目は「会社の事業内容とサステナビリティとの関係を正しく認識しているか」です。事業を通じてどのように社会の課題解決に貢献できるかが書かれているかチェックしてみましょう。例えば、環境負荷の大きい製造業であれば、環境負荷低減への貢献がまず大事ですし、金融業であれば、どうお金の流れをサステナブルにしていくかが大事な責任です。企業のトップが、社会へのインパクトが大きい自社の課題についてしっかりと認識し、対応しているかが重要なポイントとなります。

2つ目は「課題の認識に対して実行が伴っているか」です。理想を語るだけでなく、具体的な成果が書かれているメッセージは、良いメッセージと言えるでしょう。

3つ目は「将来を見据えたビジョンが語られているか」です。企業の成長のためにサステナビリティへの取り組みが不可欠であることを認識し、経営課題として組み込んでいくこと。そして、取り組みを通じて、このような社会を作りたいというビジョンが明確になっているメッセージは力強く、読む人の共感を生むのではないかと思います。

トップメッセージは、CSR報告書のエッセンスがぎゅっと詰まったコンテンツですので、ここを読み比べるだけでも、企業の姿勢が垣間見えて興味深いものです。全部は読めないという人も、ぜひ手に取っていただき、ここだけでも読んでみていただければと思います。

232号(14年3月26日発行)

CSR報告書の読み方(1)~CSR報告書のガイドライン~

今回から数回にわたって、CSR報告書をどのように読めば良いか、読むときのポイントを紹介していきたいと思います。

いろいろな会社のCSR報告書を手に取ってみて、「どうしてこんなにボリュームがあるんだろう」と感じる人も多いのではないでしょうか。CSRとあまり関係ないのでは、と思えるような情報が掲載されていると感じる人もいるかもしれません。

何を元にしてCSR報告書がつくられているのかと言うと、グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)という団体が発行する、世界共通のガイドライン(GRIガイドライン)があり、多くの企業がこれを参考に作成しています。

GRIガイドラインには150に及ぶ開示項目が定められていて、これをできるだけ多く忠実に開示しようという企業が多いことから、CSR報告書のページがどんどん増えていくという現状があるのです。ただ、この現状が良しとはされておらず、その企業にとって重要な内容だけを報告することを求める方向に変わってきています。これについては次回以降でご紹介していきます。

さて、GRIガイドラインにどのような内容が書かれているか少し見てみましょう。冒頭には「報告原則」があり、何をどのように報告するかの指針が示されています。報告内容を決める時には、ステークホルダーの関心を考慮することや、企業が社会に与える著しい社会・環境影響を反映すること。そして、報告内容のバランス、比較可能性、正確性、信頼性などの報告品質を確保することが求められています。

次に「開示項目」として「組織の名称」から始まり、「ガバナンス機能」について、売上や間接的な経済影響などの「経済的パフォーマンス」、エネルギー使用量や生物多様性への影響などを含む「環境パフォーマンス」、人権や労働慣行、製品責任などを含む「社会パフォーマンス」についてなど、150に及ぶ細かな開示項目があります。

これらの項目は、企業、消費者、行政、NPOなどのさまざまなセクターのステークホルダーが何年にもわたって議論し定めたものであり、いわば、社会の多くの人々が知りたいと思う項目をまとめたものです。もしご興味があれば、一読されてみてはいかがでしょうか。

GRIガイドライン第4版 http://www.sustainability-fj.org/gri/about/g4/

231号(14年3月12日発行)

ブログを通じたCSR情報の発信

これまでCSR情報の発信と言えばCSR報告書が主でしたが、最近は投資家からのサステナビリティへの関心が高まり、よりタイムリーな情報提供が求められるようになってきているようです。そのため、ブログを通じてCSR情報を提供する企業が増えてきました。

例えば、アメリカのスーパーマーケット、ウォルマートのCSRブログ。2月20日の投稿テーマは、物流トラックのイノベーションについてでした。

「私たちがサステナビリティの取り組みを始めた頃には、その取り組みによって当社の物流トラックがこのような形に変わることになるとは想像もしていませんでした。まだ実験段階ですが、空気力学的に20%も効率的でディーゼルや天然ガス、バイオ燃料で走ることができます。公道で走ることはできないかもしれませんが、このトラックは私たちに新しい技術とアプローチを試させてくれました。私がこのことを皆さんとシェアしているのは、サステナビリティという考え方が、物事を新しい視点で見る手助けになっていることを伝えたかったからです」

この新しいトラックの写真も掲載されているのですが、今までのトラックにない流線形で目を引くデザインです。

また、このブログでは読者がアンケートに答えることで、企業側が消費者の情報を集めることができるようになっています。「家庭でどのように自然を取り入れていますか?」という質問に対して、「カーテンを開けて日光を取り入れて室内を暖め、暖房費を減らしている」「庭に野鳥のえさ台を置いて鳥を招いている」「花や野菜を育てている」などの選択肢があり、読者は投票することができるようになっています。こういう仕組みもおもしろいですね。

日本企業のCSRブログも多くありますが、社会貢献イベントの紹介であったり、担当者の方の日々のつれづれを綴ったものが多いように見受けられます。読者に親近感を持ってもらう、関心を高めてもらうためには効果的である一方で、本質的なCSR情報の発信という面では少し物足りなさを感じたりもします。企業のサステナブルな発展を実感できるような、そんなブログが増えて、コミュニケーションが進むことが期待されます。

ウォルマートのCSRブログ「The Green Room」(英語) http://www.walmartgreenroom.com

230号(14年2月26日発行)

10,500社におよぶCSR報告書の調査から見えるもの(3)

前回に引き続き、アメリカのコーポレートレジスターが発表したCSR報告書に関するレポート「CR Perspective」(和訳すると「企業責任の全体像」)の中から、いくつかの話題をご紹介していきます。

今回のテーマは「統合レポート」。これからのCSR報告書を考える上で大きなトレンドとなっています。統合レポートについて「CR Perspective」の中では次のように述べられています。

「企業の発行するものには2種類の報告書がある。上場企業に義務化されているアニュアル(財務)レポートと、非財務部分をカバーする企業責任(CR)レポート。これらを組み合わせる取り組みが進んでいます」

「サステナビリティレポートは、幅広い範囲の読者を想定しており、投資家という重要なステークホルダーを想定していません。投資家は公的なアニュアルレポートのみを考慮することを主張しています。そしてCRレポートを無視しています。この理由は、厳しく規制されたアニュアルレポートに比べ、CRレポートは曖昧な性質を持っているためです。報告された課題やデータは同じ業種でさえ別の企業と比較できないことが多く、第三者保証が行われていないことも多いためです。また、投資家やアナリストがCRレポートの内容をどのように評価してよいか知らないという理由もあります」

アニュアルレポートとCRレポートを、ひとつのレポートに統合し、投資家が財務内容だけでなく、企業の非財務的な資産を併せて評価できるようにすることが求められてきており、2012年には、世界ですでに600社が統合レポートを発行しているということです。

「CR Perspective」のなかで発表されている、専門家へのアンケート調査によると「すべてのレポートが統合レポートになるべきだ」と答えた専門家が最も多く、「財務とCRレポートを別に発行すべきだ」という意見には反対の声が多く見られました。そして、CRレポートを利用価値のあるものにするためには何が必要かという質問に対しては「比較可能であること」が挙げられています。

定量的に測ることが難しいCSR活動をどのように比較可能な形で報告していくのか。課題は多くありますが、社会全体の流れは統合レポートへと動いています。今後、各社が試行錯誤した統合レポートの形に注目していきたいと思います。

(参照)コーポレートレジスター「CR Perspective 2013」

229号(14年2月12日発行)

10,500社におよぶCSR報告書の調査から見えるもの(2)

前回に引き続き、アメリカのコーポレートレジスターが発表したCSR報告書に関するレポート「CR Perspective」(和訳すると「企業責任の全体像」)の中から、いくつかの話題をご紹介していきます。

CSRレポートを作成する上で大きな課題となっているのが「信頼性の確保」です。企業が公正な立場で正確なデータを開示していなければ、読者は適切な評価をすることができません。信頼性の確保について「CR Perspective」の中で、以下のように述べられています。

「信頼できるレポートかどうかのひとつの指標は、それが独立した第三者によって保証されているかどうかである。しかし、第三者保証はアニュアル(財務)レポートでは必須であるが、非財務レポートでは自主的なものにとどまっている。また、保証の形式や内容も標準化されていない。幅広い保証の形式で、さまざまな組織が保証を実施しているが、主に二つの基準が出てきている。それは、『IASE 3000』と『AA1000AS』の二つの保証基準で、最近はISAE3000という基準が主流になりつつある」

ただ、第三者保証を受けている企業は年々増加しているものの、レポート発行企業全体の20%程度にとどまっています。

一方で、「どのような要素がレポートへの信頼性を高めるか」をCSR専門家に調査した結果も示されているのですが、そこでは、「悪いニュースが記載されていること」が信頼性の最も大きなポイントであるとされています。自社にとってネガティブな情報も隠さず報告する姿勢が信頼できるレポートとしての評価につながるようです。

さらに「誰が保証を提供すべきか」というCSR専門家への調査では、「監査法人」のポイントが最も高く、次いで「保証会社」、「CSRコンサルタント」「第三者ステークホルダーパネル」と続いており、「個人の社外専門家」は最もポイントが低く、否定的な評価がなされていました。

「信頼できるレポートかどうか」という観点からCSRレポートを読んでみると、また違った側面が見えてくるのではないでしょうか。

(参照)コーポレートレジスター「CR Perspective 2013」

228号(14年1月22日発行)

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